会社の借入に、社長個人の連帯保証(経営者保証)を付けていませんか。「会社が借りるなら社長が保証するのは当たり前」——長くそう思われてきましたが、その常識はいま大きく変わりつつあります。
金融庁が公表した最新の実績では、民間金融機関の新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は2025年度に件数ベースで55.7%まで上がりました(前年度52.9%/金融庁2026年6月公表)。すでに新規融資の半分以上が、社長個人の保証なしで実行されているということです。この記事では、経営者保証を外すために会社側が整えておくべき3つの条件を、融資交渉に同席してきた財務の実務目線で整理します。
なぜ今「保証は外せる」と言えるのか
背景には制度の転換があります。2022年12月、金融庁は「経営者保証改革プログラム」を公表し、2023年4月からは金融機関向けの監督指針を改正しました。金融機関が経営者保証を求めるときは「なぜ保証が必要か」「どうすれば外せるか」を経営者に具体的に説明し、その内容を記録することが義務づけられています。
さらに2024年3月からは、信用保証協会付きの融資でも、保証料を少し上乗せすることで経営者保証を外せる制度が始まりました。経営者保証は「お願いすれば外れるかもしれないもの」から、「条件を満たせば外すのが原則」へと変わったのです。あとは、その条件を会社が整えられているかどうかです。
条件1:法人と個人の「サイフ」を分ける
金融機関が保証を求める最大の理由は、「法人と個人が一体化していて、会社に貸したお金が個人に流れるリスク」です。ここが曖昧だと、利益が出ていても保証は外れません。次のような状態は要注意です。
- 社長個人の生活費や飲食代を会社の経費で落としている
- 使途のはっきりしないお金を会社から借りている(役員貸付金)
- 社長個人の車や自宅の費用を会社が負担している
こうした状態があると、「社長の財布と一体の会社」と見られます。とくに役員貸付金(会社が社長個人に貸しているお金)は、金融機関が最も嫌う勘定科目のひとつです。残っているうちは保証解除の交渉が難しくなるため、まずここを解消することが第一歩です。
条件2:本業と資産で「返せる」財務基盤をつくる
経営者保証の本質は「会社だけでは返せないかもしれないから、社長個人にも担保になってもらう」という発想です。裏を返せば、会社単独で返済できると示せれば、社長個人を当てにする必要はなくなります。
ここで大事なのは、経常利益ではなく営業利益、つまり本業で稼げているかどうかです。金融機関は本業の稼ぐ力を最も重視します。本業が黒字で手元キャッシュも厚い会社は、「社長の保証がなくても回収できる」と判断されやすくなります。
条件3:数字を「開示する経営」に切り替える
金融機関が保証を外すには、「この会社は中身が見える。異変があればすぐ分かる」という安心が要ります。数字が見えない会社は、黒字でも保証を外せません。
試算表(決算を待たずに月々の成績を確認できる書類)を毎月きちんと作り、金融機関に定期的に渡す。この積み重ねが「経営管理ができている会社」という評価につながり、保証解除の交渉材料になります。
保証を外すことは、会社の「次の一手」を軽くする
保証が外れれば、思い切った設備投資に踏み切りやすくなります。事業承継のときも、後継者が個人保証を理由にためらうことがなくなります。保証を外すことは、会社を次の世代に渡しやすくすることでもあるのです。
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