労務 × 社会保険

「社会保険料を減らせます」──
その提案が会社を危険にさらす理由

2026年7月17日 / 財務コンサルティング事業部

「給与の払い方を工夫すれば、社会保険料を合法的に減らせます」。そんな提案を受けたことはありませんか。一見うまい話ですが、実態が伴わなければ違法な「社保逃れ」と判断され、後で会社が大きな代償を払うことになります。

いま、給与を「固定給」と「歩合給」に分け、歩合給の部分を社会保険料の計算から外していた疑いが、保険業界などで相次いで報じられています。専門家がその手口を設計して企業に売り込んでいたとの指摘もあり、業界団体は法の網をかいくぐる「潜脱行為」と認定して一斉点検に乗り出しました。経営者にごまかす意図がなくても、勧められるまま導入していれば会社が責任を問われます。御社が巻き込まれないための考え方を整理します。

なぜ違法になるのか──「標準報酬月額」の考え方

社会保険料は「標準報酬月額」をもとに計算します。ここでいう報酬とは、名称にかかわらず、労働の対価として毎月支払われるものすべてを指します。したがって毎月支払う歩合給・インセンティブ・各種手当は、原則として社会保険料の算定基礎に含めなければなりません。

「固定給と歩合給に分ければ、歩合分は社保の対象外」という理屈は通用しません。名前を変えても、毎月の労働の対価であれば報酬です。対象外にできるのは、臨時に支払うものや、年3回以下の賞与など、限られた場合だけです。

御社で確認しておきたい3つのこと

次の3つは、知らないうちに「社保逃れ」と見なされやすいポイントです。

① 歩合給・手当の扱い。毎月支払う歩合給・インセンティブ・手当を、社会保険料の算定基礎にきちんと含めているかを確認してください。

② 出向・派遣という形の使い方。実態のない出向・派遣で保険料を抑えていないか。雇用の実態と契約書・台帳が一致しているかがポイントです。

③ 「業務委託・役員」への付け替え。実態は従業員なのに業務委託や役員の形にして、社会保険の加入を逃れていないか。名目ではなく実態で判断されます。

目先の節約が、なぜ高くつくのか

社会保険料を月に数万円抑えても、発覚すれば過去にさかのぼって追徴され、延滞金も加わります。負担が一度に押し寄せるため、資金繰りを直撃します。さらに金額の問題だけでなく、「社員の保険料をごまかしていた会社」という評判は、採用にも取引にも長く響きます。

経営者として押さえておきたい本質は、税と社会保険の国民負担率が4割を超え、当局の監視は強まる一方だということです。「保険料を減らす工夫」に労力を割くより、正しく払ったうえで、使える助成金・制度を取りにいくほうが、結局いちばん安全で得になります。

「正しく払っている会社」がいちばん強い

「合法的に減らせます」という言葉ほど、慎重に確かめたいものはありません。もし過去に似た提案を受けたことがある、あるいは今の給与計算が正しいか自信がないという場合は、点検だけでも意味があります。給与計算と社会保険は、間違えたときにさかのぼって求められる負担が大きいぶん、早めに整えておくほど安心です。

「うちの歩合給・手当の社保の扱いは正しいか」「受けた提案に乗って大丈夫か」——迷ったら、まずは今の給与計算を一度点検することをおすすめします。

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