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財務 × 経営改善

赤字を黒字化する正しい順番──売上アップは最後に回す

2026年9月10日荒井 成也(財務コンサルタント)

赤字がなかなか抜け出せない。売上を増やそうと必死に集客しているのに、決算を締めてみるとまた赤字だった。そんな状態になっていませんか。

多くの経営者は、赤字を消すために真っ先に「売上を増やそう」とします。新規のお客さんを集め、広告を打ち、ときには値引きしてでも数を売ろうとする。

ところが、この「売上から手をつける」やり方こそ、赤字を長引かせている一番の原因であることが少なくありません。黒字化には、手をつける正しい順番があります。

なぜ「売上アップ」から始めると失敗するのか

会社が黒字か赤字かは、損益分岐点売上高――利益がちょうどゼロになる売上――を超えられるかどうかで決まります。この損益分岐点を下げずに売上だけを増やそうとすると、2つの壁にぶつかります。

赤字の構造をそのままにして売上だけを追いかけると、「売れば売るほど利益が残らない」状態に陥りやすいのです。まず会社の利益構造そのものを整える。売上アップは最後に回すのが正解です。

ステップ1:固定費を見直して損益分岐点を下げる

固定費とは、売上があってもなくても毎月出ていく費用のことで、家賃・リース料・保険料・実態に見合わない人件費などが代表です。固定費を下げれば、売上が1円も増えなくても損益分岐点がそのまま下がります。

集客のように相手の反応を待つ必要がなく、自社の判断だけで、確実に、すぐ効かせられる。これが固定費削減の強みです。

ここで削ってはいけないのが、売上を生んでいる人や広告など「攻めの費用」です。守りの固定費(ムダ)と攻めの費用(投資)を分け、ムダだけを切る。これが黒字化の一歩目です。人件費については人件費は「削る」より「守る」で書きました。

ステップ2:粗利率を上げて「1件あたりの利益」を厚くする

粗利率とは、売上に対して手元に残る利益の割合のことです。ここが薄いと、どれだけ数を売っても利益が積み上がりません。赤字の会社の多くは「売れているのに儲からない」、つまり1件あたりの利益が薄すぎることが原因です。粗利率を上げる方向は2つです。

多くの社長がためらうのが値上げです。大切なのは、ただ価格を上げることではなく、自社の価値を正しく伝えることです。値段の理由がきちんと伝われば、その価値を理解してくれるお客さんは残ります。

安さだけで選んでいたお客さんが離れることで、利益率も現場の手間も改善することは少なくありません。一方で、値引きで数を追う戦略は、粗利率を下げて損益分岐点を押し上げるため、黒字化とは逆向きの動きになります。

ステップ3:客数・客単価を増やすのは最後

固定費を絞り、粗利率を厚くして、初めて売上アップに手をつけます。ステップ1と2で「売れば売るほど利益が残る構造」を先につくっておかないと、集客の努力がそのまま利益に変わらないからです。

逆に、利益の出る体質さえできていれば、そこに客数や客単価の上乗せが乗ったとき、利益は一気に伸びます。

客単価とは、お客さん1人あたりの平均購入額のことです。新規客を増やすより、今いるお客さんの単価を上げるほうが、追加コストが小さく効率的なことも多いので、あわせて検討する価値があります。

黒字化は「引き算」から始める

黒字化の正しい順番は「固定費削減 → 粗利改善 → 客数アップ」です。多くの会社が、この逆から――集客という一番コストと時間がかかり、成果が不確実なものから手をつけて、体力を消耗しています。

黒字化は足し算(売上を増やす)ではなく、まず引き算(ムダを削る)と掛け算(利益率を上げる)から始める。この順番を守るだけで、同じ努力でも黒字に届くスピードが変わります。

なお、黒字なのにお金が残らない場合は別の問題です。黒字貧乏の原因と対策をご覧ください。

固定費の点検、損益分岐点の把握、値決めや利益計画の組み立てをお手伝いします。試算表があれば、どの順番で何から手を付けるかをその場でお伝えします。
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