試算表が届いても、どこを見ればいいのか分からない。売上と最終利益だけ見て閉じてしまう。そういう経営者は多いと思います。数字を全部追う必要はありません。当社が財務顧問として毎月必ず見るのは、3つだけです。
この3つは、業界平均と比べるための数字ではありません。自社の固定費、営業利益、人数から出てくる数字を、毎月同じ形で見る。それだけで、会社がいま守りの局面か攻めの局面かが分かり、銀行と決算書の中身を話せるようになります。
数字1:手元資金は固定費の何か月分あるか(目安:6か月)
会社は赤字で潰れるのではなく、現金が尽きたときに潰れます。売上が止まっても、固定費を何か月払い続けられるか。この月数が、会社の体力そのものです。当社の基準は6か月分です。取引先が1社倒れても、売上が一時的に止まっても、翌月の給与と家賃を止めずに済ませるための線です。
この数字が3か月を切っているなら、節税や設備投資より先に、手元を厚くする借入を検討する局面です。「使わなくても借りる」のは、利益で返すべき借金を増やさずに倒産リスクだけを下げる手です(借入金の適正額はいくらか)。
逆に12か月分を超えているなら、守りは十分で、投資や採用に回す判断ができます。
月数の先を見るには、6か月先までの資金繰り表が要ります。賞与や納税の月に、この月数がどこまで落ちるかを先に知っておくためです。
数字2:営業利益はプラスか(経常利益ではなく)
損益計算書には利益が5つ並びますが、銀行が格付けでいちばん重く見るのは営業利益です。本業で稼げているかを示す数字だからです。経常利益が黒字でも営業利益が赤字なら、銀行は「本業では出血している。補助金や雑収入で埋めているだけ」と読みます。
毎月見るのは2点です。
- 営業利益が累計でプラスか。単月では季節変動があるので、期首からの累計で見る
- 一過性の費用が販管費に紛れていないか。決算賞与、臨時の役員退職金、固定資産の除却損は本業を続けるためのコストではなく、特別損失に計上する項目です。販管費に入れたままだと、営業利益が実力より低く見えます(銀行は決算書をそのまま読んでいない)
税引前利益は特別損失に振り分けても変わりません。
銀行が見る営業利益のラインを実力どおりに保つことが、いざというときの借入余力を守ることになるからです。
目標の水準としては、経常利益が粗利の10%あれば、会社の日常的な実力として十分な状態と当社は見ています。
数字3:社員1人あたりの粗利は年1,000万円を超えているか
人件費が高いか安いかは、給与の額では決まりません。その人が生んでいる粗利に対して、どうかで決まります。1人あたり粗利が年1,000万円を下回っている会社は、賃上げも採用も、やればやるだけ利益が消えます。逆にこの水準を超えている会社は、人を増やすほど利益が増えます。
この数字が低いとき、原因は3つのどれかです。売る値段が低い(単価)、人が多い(人員配置)、粗利の薄い仕事を受けている(付加価値)。どこに手を入れるかを数字で決めるのが、人件費を「削る」のではなく「守る」やり方です(人件費は「削る」より「守る」)。
3つの数字は「毎月10日」に出る状態にする
この3つを見るには、前月の試算表が翌月10日ごろには出ている必要があります。決算後3か月たってようやく試算表が出る会社と、翌月10日に前月の数字が出る会社では、銀行の見る「経営管理能力」の評価がまったく違います。
数字が早く出るだけで、「この経営者は数字をコントロールしている」と見られます。
| 数字 | 出し方 | 目安 | 崩れると何が起きるか |
|---|---|---|---|
| 手元資金の月数 | 現預金 ÷ 月の固定費 | 6か月分 | 売上の一時停止・取引先倒産で資金が尽きる |
| 営業利益 | 累計で見る。一過性費用は特損へ | プラス(経常は粗利の10%) | 銀行の格付けが落ち、借入条件が悪化する |
| 1人あたり粗利 | 粗利 ÷ 社員数 | 年1,000万円 | 賃上げ・採用が利益を食い、黒字貧乏になる |
黒字なのにお金が残らない、という状態は、この3つのどれかが崩れているときに起きます(黒字貧乏の原因と対策)。まず直近の試算表から、現預金・月の固定費・営業利益・粗利・社員数の5つを抜き出してみてください。3つの数字は、電卓で出ます。
6か月分・年1,000万円・粗利の10%は当社が財務顧問で用いている基準であり、業界統計ではありません。適正値は会社ごとに違います。
直近の試算表を1枚お持ちいただければ、初回の無料相談で3つの数字を出し、いま守るべきか攻めるべきかをその場でお伝えします。
初回相談は無料です。