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借入金の適正額はいくらか──2つの数字で「借りすぎ」か「守りすぎ」かを判断する

2026年9月10日荒井 成也(財務コンサルタント)

「うちの借入は多すぎないか」。この質問に「月商の3か月分までなら大丈夫」と答える解説をよく見ます。ただ、月商比は銀行員と話すための言語であって、自社の判断基準にするには粗すぎます。同じ月商3か月分でも、手元に現金が厚い会社と薄い会社では意味がまったく違うからです。

借入の適正額を判断する数字は2つあります。銀行の目線である「債務償還年数」と、経営者の目線である「利益償還債務」です。両方を持つと、借りすぎているのか、逆に守りに入りすぎているのかが見えてきます。

数字1(銀行の目線):債務償還年数は10年以内か

銀行が会社の返済能力を測るときに使う中心の指標です。借入を、毎年生み出すキャッシュで何年で返し切れるかを示します。

債務償還年数 =(有利子負債 - 正常運転資金)÷(税引後利益 + 減価償却費)

正常運転資金とは、売掛金と在庫から買掛金を引いた、商売を回すために常に必要な資金のことです(運転資金はいくら必要か)。この分は商売が続く限り借りたままでよいお金なので、返済すべき借入から除きます。

分母の「税引後利益+減価償却費」は、簡易キャッシュフローと呼ばれる、1年で会社に残る現金のおおまかな額です。

この年数が10年以内なら健全、というのが銀行実務の目安です。10年を大きく超えると、銀行は「返済能力に対して借入が重い」と見て、新規融資に慎重になります。

例:有利子負債5,000万円、正常運転資金1,200万円、税引後利益400万円、減価償却費200万円
(5,000 - 1,200)÷(400 + 200)= 6.3年 → 銀行の目安の内側

数字2(経営者の目線):利益で返すべき借金はいくら残っているか

多くの社長は「借金は全部、利益で返す」と思い込み、過剰なプレッシャーを抱えます。実際には、返済の原資は3つあります。

原資確実性中身
①現預金最も確実手元にある資産
②運転資金高い売掛金+在庫 - 買掛金(商売を畳めば現金になる)
③将来の利益最も不確実これから稼ぐ利益
  1. ①
  2. ②で返せない分だけを、
  3. ③の利益で返せばよい。この「利益で返すべき借金」を取り出した数字が、利益償還債務です。
利益償還債務 = 借入金 - 現預金 - 運転資金
年間の目標利益 = 利益償還債務 ÷ 何年で返すか(例:5年)

先の例なら、借入金5,000万円 - 現預金2,000万円 - 運転資金1,200万円 = 1,800万円。これを5年で返すなら、年間360万円の税引後利益が必要、という1つの数字が出ます。

「あといくら稼げば安心か」に、感覚ではなくBSの事実から答えが出ます。不動産購入用の20〜30年の長期借入は銀行も別枠で見るため、この計算からは除きます。

結果の見方は3つに分かれます。

手元を厚くする借入は、利益償還債務を増やさない

ここが、月商比だけで見ていると気づけない点です。手元資金を厚くする目的で1,000万円借りると、借入金が5,000万円から6,000万円に増えます。同時に現預金も2,000万円から3,000万円に増えます。

借入前:借入金5,000 - 現預金2,000 = 3,000
1,000万円借入後:借入金6,000 - 現預金3,000 = 3,000(変わらない)

借入と現預金が同額増える両建てなので、利益で返すべき借金は1円も増えません。「手元資金を厚くする借入は、財務を傷めず、利益のハードルも上げず、倒産リスクだけを下げる」という整理になります。

当社が「使わなくても借りて、手元を固定費の6か月分まで厚くする」ことをすすめる根拠はここにあります。

2つの数字の使い分け

経営計画を立てるときは利益償還債務で「最低限必要な利益」を決め、融資を打診する前や節税を判断するときは債務償還年数で銀行の見え方を点検する。この順番で両方を使います。「借入金が月商の何か月分か」は、銀行員に説明するときの言い方として持っておけば十分です。

BSの実数しか使わないので、電卓1台で計算できます。直近の決算書から、借入金・現預金・売掛金・在庫・買掛金の5つの数字を抜き出して、まず利益償還債務を出してみてください。

計算例はすべて説明用の仮の数値です。債務償還年数10年以内は銀行の自己査定実務で広く使われる目安であり、金融機関により運用は異なります。

決算書があれば、初回の無料相談で貴社の利益償還債務と債務償還年数を計算し、「あといくら稼げば安心か」を1つの数字にしてお渡しします。
初回相談は無料です。

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