事業資金を借りるとき、社長個人の連帯保証や自宅の担保を、当たり前のように差し出していませんか。「事業でお金を借りるなら、担保か保証人はどうせ必要になる」と考えている経営者は多いと思います。
すでに付いてしまった経営者保証を外す条件は別の記事で整理しました。ただ、実務でもっと確実で、手間も少ないのは、そもそも担保も保証人も付けずに借りられるルートを先に使い切っておくことです。
中小企業が無担保・無保証で借りられる制度は、少なくとも3つあります。しかも、そのうち2つには「使える期間」や「会社の規模」という制限があり、後回しにすると使えなくなります。無担保・無保証の枠は、いつでも取り出せる引き出しではありません。
ルート1:創業から2期のあいだは、原則、無担保・無保証で借りられる
1つめは、日本政策金融公庫(国が全額出資している政策金融機関)です。
公庫は公式サイトで、創業期の方(新たに事業を始める方や、事業開始後に税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できると明記しています。特定の一制度の話ではなく、創業期であること自体が無担保・無保証の理由になる扱いです。
代表的な「新規開業・スタートアップ支援資金」の条件は、公庫の公表で次のとおりです。
- 融資限度額:7,200万円
- 返済期間:設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)
自己資金がないと借りられないと思われがちですが、公庫は「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」とし、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度と示しています(詳しくは創業融資に自己資金はいくら必要か)。
無担保・無保証が原則になるのは「税務申告を2期終えていない」あいだだけで、3期目からは通常の審査に戻ります。
だからこそ、創業から2年のうちに、今すぐ使う予定がなくても必要額を借りておく判断に意味が出ます。
当社は手元資金を固定費の6か月分確保することを基準にしています。
無担保・無保証で借りられる期間のうちに、その水準まで積んでおく。
ここを逃した会社は、あとから担保や保証を求められる側に回ります。
ルート2:商工会議所経由なら、2,000万円まで無担保・無保証(マル経融資)
2つめは、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)です。商工会議所や商工会の経営指導を受けている小規模事業者が、公庫から無担保・無保証で借りられる制度です。日本商工会議所が公表している条件は次のとおりです。
- 経営指導:原則6か月以上、商工会議所・商工会等の経営指導を受けていること
- 従業員数:常時使用する従業員が20人以下(商業またはサービス業〈宿泊業・娯楽業を除く〉は5人以下)
- 事業実績:最近1年以上、商工会議所・商工会等の地区内で事業を行っていること
- 納税:所得税、法人税、事業税、都道府県民税、市町村民税(均等割を含む)を原則すべて完納していること
- 貸付限度額:2,000万円/返済期間:運転資金・設備資金ともに10年以内(据置期間2年以内)
- 担保・保証人:不要(信用保証協会の保証も不要)
保証協会の保証もいらないという点が効きます。協会の枠を1円も使わずに2,000万円まで借りられるということは、協会の枠を別の資金にそのまま残せるという意味です。
落とし穴は「原則6か月以上の経営指導」の要件です。資金が必要になってから駆け込んでも、その日には間に合いません。商工会議所の窓口とのつながりは、お金に困る前につくっておくものです。年会費数万円の会員費が、この一点で回収できることは珍しくありません。
ルート3:保証協会付きでも、保証料の上乗せで個人保証を外せる
3つめは、信用保証協会付きの融資でも、保証料を上乗せすることで経営者保証を付けずに済ませる方法です。2024年3月15日に始まった「事業者選択型経営者保証非提供制度」です。保証料率の上乗せ幅は財務の状況で変わります(信用保証協会の公表)。
その財務要件が次の2つです。
- 直近の決算で債務超過でないこと(貸借対照表の純資産の額がゼロ以上)
- 直近2期連続で、減価償却前の経常利益が赤字でないこと(経常利益+減価償却費がゼロ以上)
加えて、過去2年間、金融機関の求めに応じて決算書を提出していること、直近の決算で代表者への貸付金がなく、役員報酬などが社会通念上相当な範囲を超えていないこと、これらを今後も続けると誓約する書面を出すことが求められます。
注意したいのは、上乗せ分に対する国の補助が段階的に縮んでいることです。信用保証協会の公表では、補助は保証申込日に応じて、令和7年4月1日〜令和8年3月31日が0.10%、令和8年4月1日〜令和9年3月31日が0.05%です。
今年度に申し込めば0.05%の補助が付きますが、その先の記載はありません。使うつもりがあるなら、時期は早いほうが有利です。
上乗せ率や補助の運用は各都道府県の信用保証協会が公表していますので、検討の際は自社の地域の協会でご確認ください。
3つのルートに共通する、たった1つの条件
3つを並べると共通点が見えてきます。会社のお金と社長個人のお金が、はっきり分かれていることです。3つめの制度では、代表者への貸付金があるだけで要件から外れます。決算書に社長への貸付金が載っている会社は、無担保・無保証の選択肢を自分で1つ消していることになります。
そして、時限が2つあります。創業期の無担保・無保証は税務申告2期を終えるまで。保証料に対する国の補助は令和8年度で0.05%まで縮んでいます。どちらも、思い立ったときには終わっているタイプの制度です。
自社の借入を一度並べてみてください。担保や個人保証が付いているものはどれで、それは本当に必要だったのか。無担保・無保証で借りられる枠が、まだ手元に残っていないか。出さずに済むなら出さない。それだけの話です。
出典:日本政策金融公庫「創業前支援 Q&A」「新規開業・スタートアップ支援資金」/日本商工会議所「マル経融資」/東京信用保証協会・愛知県信用保証協会「事業者選択型経営者保証非提供制度」(いずれも2026年9月時点の公表内容)。利率は変動するため本文には記載していません。国の保証料補助は年度で変わります。
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