債務超過になると、銀行の評価は大きく下がり、追加の融資は通りにくくなります。立て直すには資本を厚くするしかありませんが、増資に応じてくれる出資者は、中小企業ではまず見つかりません。
ここで使える手段の1つが、資本性劣後ローンです。借入でありながら、銀行が決算書を見るときには「自己資本」として扱ってくれます。この記事では、日本政策金融公庫の資本性ローン(正式名称:挑戦支援資本強化特別貸付)を例に、使う前に知っておきたい3つのポイントを書きます。
ポイント1:借入なのに、銀行は「資本」として見る
資本として扱われるのは、返し方・金利・倒産時の順番という3つの貸出条件が、資本に準じているからです(金融庁「資本性借入金関係FAQ」)。公庫の制度は、この3つを満たしています。
- 返済は最終期日の一括──それまでは利息だけを払う
- 劣後──会社が法的に倒産した場合、返済の順番はほかのすべての債務より後になる
- 金利は業績で変わる──赤字の年は低く、黒字の年は高い
公庫は、この借入を金融機関の資産査定で自己資本とみなせる、と明記しています。
銀行の目には「債務超過の会社」から「自己資本のある会社」に変わります。これが、民間の銀行から次の融資を引き出す足場になります。株式ではないので、社長の持株比率が下がらない点も利点です。
ポイント2:赤字の間は安い。黒字になると金利が上がる
公庫の国民生活事業では、融資後1年ごとに直近の決算を見て、2つの区分の金利が適用されます。
| 直近の決算 | 金利(年) | 2,000万円・期間10年の年間利息 |
|---|---|---|
| 税引後の当期純利益が0円未満(赤字) | 0.50%(期間を問わず) | 10万円 |
| 税引後の当期純利益が0円以上(黒字) | 3.25%〜3.95%(期間で変わる。7年超10年以内は3.65%) | 73万円 |
業績が悪い時期は負担を軽くし、立ち直ったら相応の利息を払う。配当に近い考え方で作られています。
つまり資本性ローンは、安く借りるための制度ではありません。立て直しの期間に元金返済を止め、決算書の見え方を変えるための制度です。
民間金融機関の支援で事業計画書を作り、その金融機関が必要資金の原則2分の1を超えて融資するなどの要件を満たすと、融資後3年間は業績にかかわらず0.50%になります。
ポイント3:一括返済と、「資本」扱いが減っていく時期を先に決める
10年で2,000万円を借りれば、10年後に2,000万円を一度に返します。毎年の返済がない分、返す原資を自分で積み上げなければなりません。単純に割れば、毎年200万円ずつ手元に残していく計算です。
もう1つ見落としやすいのが、自己資本とみなされる割合です。満期まで5年以上ある間は残高の100%ですが、残りが5年を切ると、1年ごとに20%ずつ減っていきます。
| 満期までの残り | 資本とみなす部分 | 2,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 5年以上 | 100% | 2,000万円 |
| 4年以上5年未満 | 80% | 1,600万円 |
| 3年以上4年未満 | 60% | 1,200万円 |
| 2年以上3年未満 | 40% | 800万円 |
| 1年以上2年未満 | 20% | 400万円 |
| 1年未満 | 0% | 0円 |
10年で借りた場合、資本として満額に数えられるのは最初の5年間までです。6年目からは毎年400万円ずつ減り、最後の1年はゼロになります。
資本扱いが減り始める前に、本業の利益で本当の純資産を積み上げておく必要があります。審査の中心も事業計画書で、完済まで四半期ごとに経営状況を報告する特約を結びます。立て直しの道筋を数字で説明できるかどうかが分かれ目です。
まとめ:資本性劣後ローンは「時間を買う資本」
- 01実質の自己資本がいくらになるかを出す銀行の見方がどう変わるかを、借りる前に数字で確かめる。
- 02黒字化した年の利息を、営業利益で払えるかを見る2,000万円・10年なら年73万円。
- 03満期と、資本扱いが減り始める時期までの計画を書く何で純資産を積み上げるか、借換えに頼るのか。
当社は営業利益を最も重視する指標にしています。資本性ローンで稼いだ時間のうちに、営業利益を黒字に戻す計画を作ることが、この制度を使う本来の目的です。
資本とみなす条件と残存期間による逓減は、金融庁「資本性借入金関係FAQ」(令和2年5月)によります。制度の内容・金利は日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」国民生活事業のページによります(融資限度額7,200万円・返済期間5年1か月以上20年以内・無担保無保証人)。金利は改定されるため、申込み時に公庫の最新の掲載をご確認ください。自己資本の計算は仮設例で、債務者区分の判定は各金融機関によります。
債務超過の決算書が銀行からどう見えているかを診断し、資本性ローンを入れた場合の実質自己資本と、黒字化後の利息・満期の返済計画を試算します。公庫と民間金融機関に出す事業計画書づくりもお手伝いします。
無料相談を申し込む