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財務 × 資金繰り

リスケは逃げではない──銀行に相談する前に整える3つのこと

2026年9月10日荒井 成也(財務コンサルタント)

毎月の返済が重く、給与や仕入の支払いと返済日が重なると手元が尽きそうになる。そういう状態で、いちばんやってはいけないのが、返済日を過ぎてから銀行に連絡することです。

リスケジュール(リスケ)とは、銀行に返済条件の変更――返済額の減額や一定期間の元金返済の猶予――を申し入れることです。「銀行に泣きつく」と受け取られがちですが、実務では違います。

資金繰り表と立て直しの計画を持って、延滞する前に相談する。この順番を守れば、リスケは会社を立て直すための正規の道具になります。相談する前に整えておく3つのことを書きます。

前提:リスケをすると、銀行の中で会社の区分が変わる

銀行は貸出先を、返済能力に応じて「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」などの債務者区分に分けています。この区分で、銀行が積む貸倒引当金と、その会社への融資スタンス(貸すか、金利、リスケに応じるか)が決まります。

基準だった金融検査マニュアルは2019年12月に廃止されましたが、区分の考え方は実務で引き続き使われています。

リスケをすると、その債権は原則として「貸出条件緩和債権」に分類され、会社は要注意先のうち「要管理先」以下の扱いになります。銀行にとっては不良債権です。ここに入ると、新規の融資は当面まず出ません。

ただし、一定の要件を満たす経営改善計画があれば、銀行は不良債権に区分しなくてよい、というルールがあります。
つまり、リスケの可否と同じくらい重要なのが「計画を付けて申し入れるかどうか」です。
計画なしのリスケは区分を落とし、計画ありのリスケは区分を守れる。
ここが分かれ目です。

整えること1:資金繰り表で「いくらまで返済を落とせば回るか」を示す

銀行が最初に知りたいのは、「返済をいくらに落とせば、この会社は当面回るのか」です。これに答える道具が資金繰り表です。6か月から1年先まで、月ごとの入金・出金・残高を並べ、返済額を現行のままにした場合と、減額した場合の残高を比べます。

この表があると、銀行との会話が「お願い」から「条件の相談」に変わります。複数の銀行から借りている場合、返済の減額は各行の借入残高に応じて按分する(プロラタ返済)のが基本です。特定の銀行だけ優先して返すと、他行の合意が取れなくなります。

整えること2:銀行が区分を落とさずに済む「経営改善計画」の骨格

不良債権に区分しないための計画には、実務で「実抜計画」「合実計画」と呼ばれる2つの型があります。中小企業は要件が緩和されていますが、骨格は共通です。

実抜計画(実現可能性の高い抜本的な計画)合実計画(合理的かつ実現可能性の高い計画)
期間概ね3年後に業況良好・財務に特段の問題なし(実質正常先)原則5年以内(事情により概ね10年以内)で正常先へ
要件関係者の同意/支援額が確定し追加支援不要/売上・費用・利益予測が十分に厳しい前提売上高・当期利益が計画比概ね8割以上/全取引金融機関の支援合意/金利減免・残高維持にとどまり債権放棄を伴わない

計画の中身は、

  1. ①実態把握(直近3〜5期の推移、含み損や不良資産を反映した本当の純資産、資金繰り)→
  2. ②課題の特定→
  3. ③改善アクション(担当者・期限・数値目標つき)→
  4. ④数値計画(5年程度の損益・貸借・資金繰り)→
  5. ⑤返済計画→
  6. ⑥モニタリング、という順で作ります。ゴールは明確で、営業黒字化 → 債務超過の解消 → 債務償還年数10年以内を、期間内にどう達成するかを数字で示すことです(債務償還年数の計算)。

根拠のない上振れは信用されません。「十分に厳しい前提」が要件に入っているとおり、バラ色の計画より、厳しめの前提で黒字化する計画のほうが銀行は受け入れます。改善アクションの順番は固定費→粗利→客数です。

整えること3:全行を一堂に集める準備(バンクミーティング)

複数の銀行から借りている場合、1行ずつ個別に頼むと条件がばらばらになり、合実計画の要件である「全取引金融機関の合意」が取れません。全取引銀行を集めて計画を説明し、同じ条件で支援の合意を得る場がバンクミーティングです。

計画の策定には、国の認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)を通じた経営改善計画策定支援の制度があり、費用の一部が補助されます。要件や補助の内容は中小企業庁・各地の中小企業活性化協議会の公表でご確認ください。

順番を守れば、リスケは立て直しの道具になる

延滞してから相談する会社と、資金繰り表と計画を持って延滞前に相談する会社では、銀行の対応がまったく違います。前者は回収の相手、後者は支援の相手です。返済が苦しいと感じたら、まず資金繰り表を6か月先まで引いてください。

残高が固定費の何か月分まで落ちるかが見えれば、相談のタイミングと、落とすべき返済額が決まります。

債務者区分・実抜計画・合実計画の要件は、旧金融検査マニュアルおよび金融庁の監督指針に基づく銀行実務の整理です。金融機関により運用は異なります。

資金繰り表の作成、返済額の減額幅の試算、経営改善計画の骨格づくり、バンクミーティングの資料準備をお手伝いします。返済が苦しくなる前のご相談が、選べる手を増やします。
初回相談は無料です。

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