財務 × 融資

銀行は決算書をそのまま読んでいない──
融資評価が変わる3つのポイント

2026年7月15日 / 財務コンサルティング事業部

「決算書は、税理士が作るもの」だと思っていませんか。作成そのものは税理士の仕事ですが、その決算書を「銀行がどう読むか」まで意識して作っている経営者は、そう多くありません。同じ業績でも、見せ方しだいで融資の通り方は変わります。

じつは銀行は、提出された決算書をそのまま鵜呑みにはしていません。独自の基準で数字を組み替え、「実態バランス」と呼ばれる別の貸借対照表を作り直したうえで、会社の格付けを決めています。粉飾の話ではありません。事実を正しく分類し直すだけで、評価は変わります。銀行が決算書のどこを見ているのかを、3つのポイントで整理します。

ポイント1:最も見られるのは「営業利益」。一過性の経費は特別損失へ

銀行の格付けで、損益計算書のなかで最も重視されるのは営業利益です。営業利益は「本業の稼ぐ力」を示す数字だからです。経常利益が黒字でも営業利益が赤字なら、銀行は「本業では出血している」と判断します。

ここで意識したいのが、一過性の経費をどこに計上するかです。利益が出た年に社員へ還元する決算賞与を、多くの会社が販売管理費に計上しています。しかしこれは本業を続けるためのコストではなく、出た利益の分配です。臨時の役員退職金や機械の除却損も同じく一過性の支出です。

決算賞与200万円を販管費に計上 → 営業利益500万円(本業の力は500万円と見られる)
同じ200万円を特別損失に計上 → 営業利益700万円(本業の力は700万円と伝わる)

特別損失とは、毎期は発生しない臨時の損失を計上する科目です。ここに振り分けても税引前利益は変わらない(節税効果は同じ)まま、銀行が見る営業利益のラインだけを高く保てます。ただし特損に計上できる項目は会計基準で限られています。決算前に顧問税理士や財務の専門家と相談し、正しい分類で処理することが大前提です。

ポイント2:「役員借入金」は独立科目にするだけで自己資本扱いになる

社長が会社にお金を貸し付けているケースは、中小企業では珍しくありません。このお金は銀行の格付け上、返済義務のない疑似資本とみなされます。社長が「返してくれ」と言わない限り出ていかないため、実質的に自己資本と同じ扱いを受けるのです。

ところが「短期借入金」「長期借入金」に紛れ込ませていると、審査ソフトは自動的に負債としてカウントします。対策はシンプルで、貸借対照表に「役員借入金」という独立科目を設けるだけです。

役員借入金1,000万円を負債に計上 → 自己資本500万円・自己資本比率10%
同じ1,000万円を独立科目化 → 自己資本1,500万円相当・自己資本比率30%相当

自己資本比率は総資産に占める自己資本の割合です。中小企業では20%超で安全圏、30%超で優良と評価されやすくなります。科目名を正しく書き換えるだけで、債務者区分が一段上がる可能性があります。

ポイント3:手元キャッシュは「銀行を呼び寄せる」最強の武器

「利益が出ていれば融資は通る」と思いがちですが、現場は少し違います。銀行は「お金があるところに、さらに貸したがる」という原理で動いています。銀行が最も気にするのは返済能力で、返済原資は利益ではなくキャッシュだからです。

覚えておきたいベンチマークが「固定費6ヶ月分のキャッシュ」です。年間固定費が6,000万円なら、手元に3,000万円を持っておきたい水準です。自社の体力はこう測れます。

生存可能期間 = 手元現預金 ÷ 年間固定費

この数字が0.5(半年)を下回っていたら、売上が止まったとき半年も持たない状態です。なお自己資本比率が高くても、キャッシュが回らなければ会社は止まります。これが黒字倒産です。倒産は赤字ではなく、キャッシュの枯渇で起こります。手元キャッシュを厚くすることが、銀行に対する最大のプレゼンになります。

決算書は「経営の武器」。年1回ではなく毎月見直す

もうひとつ、銀行の評価を大きく左右するのが「月次試算表を早く出せるか」です。決算後3ヶ月たってようやく試算表が出る会社と、月末締めの翌月10日に前月の数字が出る会社では、経営管理能力(ガバナンス)の評価がまったく違います。早く数字が出るだけで「この経営者は数字をコントロールしている」と見られます。

決算書の見せ方を変えるのは、粉飾ではありません。事実を正しく分類し、銀行が知りたい情報を正しい場所に置き直すだけです。「うちは融資が通りにくい」と感じている経営者ほど、まず借入金の科目名から見直してみてください。次の決算から変化が出てきます。

今すぐできるアクションは3つです。①損益計算書の販管費に、一過性の経費(決算賞与・臨時の役員退職金など)が紛れていないか確認する。②社長から会社への貸付が「役員借入金」の独立科目になっているか確認する。③手元現預金が固定費の何ヶ月分あるか数え、半年分に満たなければ「晴れているうちの借入」を検討する。

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