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最低賃金2026年度改定、10月までに終わらせる3つの計算

2026年9月10日荒井 成也(財務コンサルタント)

「最低賃金が上がっても、うちはもともとそれより高い時給を払っているから関係ない」――そう思っていませんか。

2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、7月28日に中央最低賃金審議会が全国加重平均で55円引上げの目安を答申し、その後の各都道府県の審議を経て、9月3日に厚生労働省が47都道府県の答申額を取りまとめて公表しました。

全国加重平均は1,177円(前年度1,121円から56円の引上げ)で、引上げ額は都道府県により54円から65円、最高額は1,280円、最低額は1,085円です。

発効日は10月1日から12月2日までの間で、都道府県ごとに順次発効します。東京都は現行の1,226円から54円引き上げて1,280円となり、10月1日に発効します(東京労働局・9月1日公示)。

目安の段階では都市部より地方の引上げ幅のほうが大きく、地方で事業をしている会社ほど影響が重く出る年です。

最低賃金の引上げは、経営者が「うちは何%上げようか」と決められる賃上げではありません。最低賃金法(第4条)により、最低賃金額以上の賃金を支払うことは使用者の義務で、下回れば罰則の対象になります。

経営判断ではなく、確定したコストです。発効までに終わらせておくべき3つの計算を整理します。

計算1:影響額は「最低賃金の人の差額」では終わらない

まず自社への影響額を計算します。ここで多くの会社が、金額を実際よりも小さく見誤ります。最低賃金の近くで働いている人の差額だけを足して、それで終わりにしてしまうからです。

たとえばパート10名、時給1,150円、月120時間の会社が55円上げると、差額は月66,000円、年間792,000円です。しかし、実際に増えるコストはこれでは済みません。

この4つを足したものが、本当の影響額です。まずこの数字を出さないことには、次の判断ができません。

計算2:原資は「値上げか粗利」から作る。人件費を削るのは最後

影響額が出たら、次はその原資をどこから持ってくるかです。順番があります。固定費の見直し、粗利(売上総利益)の改善、そして客数を増やす。この順です(赤字を黒字化する正しい順番)。

人を減らして人件費を削る選択は、いちばん最後に置いてください。人を減らせば売上をつくる力そのものが落ちて、翌期にもっと深い赤字として返ってくるからです。

判断の目安になる数字は2つです。

粗利率30%の会社が、数量を変えずに価格を3%上げる → 粗利は 10%増(売上100・粗利30 → 売上103・粗利33)

現実にいちばん効くのは、値上げです。最低賃金が毎年上がることが前提になった世の中で、価格を据え置くという判断は、実質的に自社の利益を毎年減らしていく判断になります。

計算3:同じ賃上げを、設備投資に変えられないか

厚生労働省の業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて生産性を上げる設備投資(機械の導入、POSレジ、システム化など)をした中小企業に、その費用の一部を助成する制度です。

助成の上限額は引上げ額と引き上げる労働者数によって、助成率は引上げ前の事業場内最低賃金の水準によって変わります。令和8年度の交付申請の受付は9月1日に始まっています。

何も準備しない場合:10月に人件費だけが増えて、生産性は変わらない
助成金を使う場合:同じ人件費増で、あわせて設備が入り、1人あたりの生産性が上がる

ただし、助成金は後払いで、要件も細かく決まっています。設備投資の資金は自己資金か融資で先に用立てる前提で計画を組み、助成金は計画の中核に置かないでください。上限額・助成率・対象になる設備の範囲は、必ず厚生労働省の最新の公表内容でご確認ください。

この2か月でやることは3つ

  1. 01本当の影響額を出す波及分・割増賃金・社会保険料・月給者の時間単価まで含めて計算する
  2. 02原資を作る順番を守る固定費の見直しと値上げ・粗利改善から。人件費を削るのは最後で、営業利益は守る
  3. 03業務改善助成金を検討する同じ引上げを設備投資に振り替えられないか、受付開始の9月1日以降に確認する

最低賃金の引上げは、来年も再来年も続きます。毎年その場しのぎで飲み込む会社と、そのたびに値上げと生産性で吸収する会社では、5年後の利益がまったく違ってきます。まずは、自社のパート・アルバイトの時給一覧と月給者の時間単価を並べてみてください。

出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」(2026年7月28日)、同「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」(2026年9月3日)、東京労働局「東京都最低賃金を1,280円に引上げます」(2026年9月1日)、厚生労働省「業務改善助成金」。都道府県ごとの改定額と発効日は各労働局の公表でご確認ください。計算例の数値は説明用の仮の数値です。社会保険料率・助成金の上限額は本文に記載していません。

最低賃金改定による自社の影響額の試算、賃金テーブルの見直し、値上げと粗利改善による原資のつくり方、業務改善助成金の活用可否をお手伝いします。労務は関連会社の荒井人事労務事務所と連携して対応します。
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