中小企業の社長や個人事業主には、会社員のような退職金がありません。小規模企業共済は、その退職金を自分で積み立てる国の制度です。掛金は全額が所得控除になり、受け取るときも退職金と同じ扱いになります。
ただし、会社の経費にはならないこと、やめ方によっては不利になることなど、知らずに入ると後で困る点もあります。この記事では、入る前に押さえておきたいことを順に書きます。
加入できる人
常時使用する従業員の数で決まります。役員や家族従業員、パートは数えません。人数は加入時点で判定し、後で増えても続けられます。
| 業種 | 常時使用する従業員 |
|---|---|
| 建設・製造・運輸・不動産・農業、宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 卸売・小売、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
- 入れる人──個人事業主とその共同経営者(2人まで)、株式会社の取締役・監査役、合同会社の業務執行社員など
- 入れない人──本業で給与を受けている兼業の人、役員登記のない人、使用人兼務役員など
掛金は全額が所得控除。ただし会社の経費にはならない
掛金は月1,000円〜7万円(500円単位)で、全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引けます(所得税法第75条)。上限で掛ければ年84万円です。仮に所得税と住民税の税率が合わせて30%の人なら、年25万円ほど税金が軽くなる計算です。
受け取るときの税金は、受け取り方で変わる
廃業したとき、役員を退任したときなどに共済金を受け取ります。
一括と分割の併用もできます。遺族が受け取る場合は、相続財産とみなされます。
やめ時の注意:20年未満・65歳未満の任意解約は不利
廃業や退任ではなく、自分の都合で途中解約すると「解約手当金」になり、条件が悪くなります。
| 掛けた月数 | 解約手当金の支給率(任意解約) |
|---|---|
| 1〜11か月 | 0%(掛け捨て) |
| 12〜83か月 | 80% |
| 120か月(10年) | 85% |
| 180か月(15年) | 92.5% |
| 240か月(20年)〜 | 100%(以後少しずつ上がる) |
20年未満で任意解約すると、掛けた額を下回ります。さらに、65歳未満での任意解約は一時所得になり、掛金を差し引いて計算できません(所得税法施行令第183条第2項)。掛金は掛けたときにすでに所得控除しているからです。
お金が要るときは、解約せずに借りる
契約者貸付制度があり、掛金の範囲内(納付月数に応じて7〜9割)で、無担保・無保証で借りられます。2026年10月時点の利率は、一般貸付が年1.5%、緊急経営安定貸付などの特別貸付が年0.9%です。一般貸付は12か月以上の掛金の納付が条件です(共済の貸付制度の使い方)。
まとめ:入る前に決めておくこと
- 01加入資格を確かめる従業員数と、自分の立場(役員登記・兼業の有無)。
- 02役員報酬とセットで掛金を決める会社の経費にはならない。控除できる所得があるか、生活費と合わせて無理のない額か。
- 03途中でやめない額にする資金が要るときは貸付を使う。受け取りは廃業・退任・65歳以降に合わせる。
加入資格・掛金・支給率・貸付利率は中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」の掲載(2026年10月7日確認)によります。支給率は平成16年4月以降の掛金のもので、途中で掛金を増減すると240か月以上でも元本を下回ることがあります。税額の試算は説明のための仮定です。受け取り方による税額は、顧問税理士にご確認ください。
役員報酬の額と小規模企業共済・経営セーフティ共済の掛金を、会社と社長個人の手元資金の両方から一緒に決めます。
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