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小規模企業共済は、経営者が自分で積む退職金

2026年10月7日荒井 成也(財務コンサルタント)

中小企業の社長や個人事業主には、会社員のような退職金がありません。小規模企業共済は、その退職金を自分で積み立てる国の制度です。掛金は全額が所得控除になり、受け取るときも退職金と同じ扱いになります。

ただし、会社の経費にはならないこと、やめ方によっては不利になることなど、知らずに入ると後で困る点もあります。この記事では、入る前に押さえておきたいことを順に書きます。

加入できる人

常時使用する従業員の数で決まります。役員や家族従業員、パートは数えません。人数は加入時点で判定し、後で増えても続けられます。

業種常時使用する従業員
建設・製造・運輸・不動産・農業、宿泊業・娯楽業20人以下
卸売・小売、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下

掛金は全額が所得控除。ただし会社の経費にはならない

掛金は月1,000円〜7万円(500円単位)で、全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引けます(所得税法第75条)。上限で掛ければ年84万円です。仮に所得税と住民税の税率が合わせて30%の人なら、年25万円ほど税金が軽くなる計算です。

会社の役員が入る場合、掛金は会社の損金にはなりません。役員本人が自分の報酬から払い、本人の所得控除になります。役員報酬がゼロや少額の社長は、控除する所得がないので効果が出ません。役員報酬の決め方とセットで考えます(役員報酬の正解はいくらか)。

受け取るときの税金は、受け取り方で変わる

廃業したとき、役員を退任したときなどに共済金を受け取ります。

一括で受け取る:退職所得の扱い。退職所得控除があり、税負担が軽い
分割で受け取る:公的年金等の雑所得の扱い。60歳以上・共済金300万円以上などの条件がある

一括と分割の併用もできます。遺族が受け取る場合は、相続財産とみなされます。

やめ時の注意:20年未満・65歳未満の任意解約は不利

廃業や退任ではなく、自分の都合で途中解約すると「解約手当金」になり、条件が悪くなります。

掛けた月数解約手当金の支給率(任意解約)
1〜11か月0%(掛け捨て)
12〜83か月80%
120か月(10年)85%
180か月(15年)92.5%
240か月(20年)〜100%(以後少しずつ上がる)

20年未満で任意解約すると、掛けた額を下回ります。さらに、65歳未満での任意解約は一時所得になり、掛金を差し引いて計算できません(所得税法施行令第183条第2項)。掛金は掛けたときにすでに所得控除しているからです。

この「20年未満は元本割れ」は、任意解約の場合だけの話です。廃業や役員の退任で受け取る共済金には、20年の線はありません。続けられる掛金額で入り、途中で解約しないことが大前提です。

お金が要るときは、解約せずに借りる

契約者貸付制度があり、掛金の範囲内(納付月数に応じて7〜9割)で、無担保・無保証で借りられます。2026年10月時点の利率は、一般貸付が年1.5%、緊急経営安定貸付などの特別貸付が年0.9%です。一般貸付は12か月以上の掛金の納付が条件です(共済の貸付制度の使い方)。

まとめ:入る前に決めておくこと

  1. 01
    加入資格を確かめる従業員数と、自分の立場(役員登記・兼業の有無)。
  2. 02
    役員報酬とセットで掛金を決める会社の経費にはならない。控除できる所得があるか、生活費と合わせて無理のない額か。
  3. 03
    途中でやめない額にする資金が要るときは貸付を使う。受け取りは廃業・退任・65歳以降に合わせる。

加入資格・掛金・支給率・貸付利率は中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」の掲載(2026年10月7日確認)によります。支給率は平成16年4月以降の掛金のもので、途中で掛金を増減すると240か月以上でも元本を下回ることがあります。税額の試算は説明のための仮定です。受け取り方による税額は、顧問税理士にご確認ください。

役員報酬の額と小規模企業共済・経営セーフティ共済の掛金を、会社と社長個人の手元資金の両方から一緒に決めます。

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