「経営セーフティ共済に入れば節税になる」とよく聞きます。たしかに掛金は全額が損金(個人事業なら必要経費)になります。ただし、解約して戻ってくるお金は全額が益金です。税金は消えるのではなく、解約する年まで後ろにずれるだけです。
この共済は、本来は取引先が倒産したときに無担保・無保証で借りられる備えです(連鎖倒産に備える共済と手元資金)。節税として使うなら、入るときより「いつ解約するか」を先に決めておく必要があります。
仕組みのおさらい
- 加入できる会社──引き続き1年以上事業を続けている中小企業者。設立直後は入れません
- 掛金──月5,000円〜20万円(5,000円単位)。積み立てられるのは800万円まで
- 税務──法人は損金、個人は事業所得の必要経費(租税特別措置法第66条の11・第28条)。1年以内の前納なら、払った期の損金にできる
月20万円を1年分前納すれば、240万円をその期の損金にできます。ここまでは「節税」に見えます。
ポイント1:解約手当金は全額が益金。税金は先送りされるだけ
掛金を損金にしていた場合、解約手当金は益金になります。月20万円を40か月払って800万円を積み立てた会社が任意解約すれば、800万円が戻り、その800万円がそのまま解約した期の利益に乗ります。
普通の期に解約すれば、減らした税金をほぼそのまま払い直すことになります。違いが出るのは、解約した期に益金を打ち消す損失がある場合だけです。
ポイント2:解約する年を先に決める。40か月未満は元本割れ
任意解約の解約手当金は、掛金総額に次の支給率を掛けた額です。
| 掛金を払った月数 | 任意解約の支給率 |
|---|---|
| 1〜11か月 | 0%(掛け捨て) |
| 12〜23か月 | 80% |
| 24〜29か月 | 85% |
| 30〜35か月 | 90% |
| 36〜39か月 | 95% |
| 40か月〜 | 100% |
そのうえで、解約は益金を受け止められる期にぶつけます。
社長の引退で退職金を出す期は、大きな損金が立ちます。解約手当金を退職金の原資に回せば、現金と損益の両方がかみ合います。
大型の設備の除却や、業績の落ち込みで赤字が見込まれる期です。ただし、解約しても銀行から見た営業利益は変わりません。解約手当金は本業の外の収益だからです。
会社をたたむ、事業を譲る、といった最後の期です。出口の時期が決まっている会社ほど、計画的に使えます。
益金が立って税金が増えるうえ、取引先が倒産したときの共済金貸付(掛金総額の10倍まで・上限8,000万円・無利子)も使えなくなります。
急な資金需要には、まず共済の一時貸付や銀行融資を検討します(共済の貸付制度の使い方)。
ポイント3:解約して再加入すると、2年間は損金にならない
以前は「利益が出た期に入り、資金が要るときに解約し、また入る」という回し方がありました。令和6年度の税制改正で、これは封じられました。
令和6年10月1日以後に共済契約を解除し、そのあと再び加入した場合、解除の日から2年を経過する日までに払う掛金は損金(必要経費)になりません(租税特別措置法第66条の11第2項・第28条第2項)。
国税庁の資料では、この間の掛金は資産として計上する扱いです。対象は任意解約に限らず、契約の「解除」全般です。
まとめ:入る前に決めておく3つのこと
- 01何のために入るのか本来の目的は取引先倒産への備え。節税だけが目的なら、先送りであることを前提にする。
- 02いつ解約するのか退職金の期、廃業・承継の期など、益金を受け止められる期を決めておく。40か月未満は元本割れ。
- 03途中で資金が要ったらどうするのか解約ではなく、貸付や融資でつなぐ手順を先に決める。
支給率・掛金・積立限度額は中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済」の掲載(2026年10月7日確認)によります。解約の税務は同機構のFAQ(掛金を損金に算入していた場合、解約手当金は益金)、再加入の扱いは国税庁「令和6年度 法人税関係法令の改正の概要」によります。共済金貸付には、加入から6か月以上たってからの倒産であることなどの要件があります。個別の税額や解約の時期の判断は、顧問税理士にご確認ください。
共済の残高と決算の見込みから、いつ解約すれば益金を受け止められるかを、退職金や承継の時期と合わせて一緒に組み立てます。資金が足りないときの貸付・融資の手順もあわせて整理します。
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