銀行は決算書を受け取ると、機械的に採点します。指標ごとに点をつけ、合計点で格付け(A1〜Dなど)と債務者区分(正常先・要注意先…)を決める。金利も、貸せる額も、保証付きかプロパーかも、この採点から始まります。
採点表は銀行ごとに違い、外には出ません。ただ、中小企業支援の研修で使われる一般的なモデルを見ると、どこに配点の重心があるかはわかります。この記事では、その配点をもとに「点が動く順番」で打ち手を並べます。
配点の重心は「返済能力」にある
研修資料の一般的なモデルでは、12の指標を4つの領域に分けて100点満点で採点します。
| 領域 | 配点 | 主な指標 |
|---|---|---|
| 返済能力 | 38点 | 債務償還年数(15点)、償却前営業利益率(15点)、インタレストカバレッジレシオ(8点) |
| 成長性 | 25点 | 売上・利益の増加率など |
| 安全性 | 21点 | 自己資本比率、流動比率、固定長期適合率など |
| 収益性 | 15点 | 売上高経常利益率、総資本経常利益率など |
返済能力だけで38点。安全性の21点の倍近くです。銀行は「潰れないか」より「返せるか」を重く見ている、と読めます。このモデルでは40点が正常先の下限の目安で、30点台だと要注意先に落ちます。
打ち手1:営業利益(償却前)を出す
償却前営業利益率は、営業利益に減価償却費を足して売上で割ったものです。返済能力38点のうち15点がここ。当社が「営業利益が決算書で最も重要な数字」と言い続けるのは、この配点があるからです。
営業利益を出す順番は、固定費の見直し→粗利率の改善→客数、の順です(赤字を黒字化する順番)。決算前にできることとしては、営業外に置くべき費用(本業と無関係の支出)を営業費用に混ぜていないか、役員報酬の水準が過大でないか、の点検があります。
打ち手2:債務償還年数を10年以内に
借入を、毎年生み出すキャッシュで何年で返せるか。10年以内が銀行の目安で、ここも15点。分子を減らすか、分母を増やすかの2択です。分母は打ち手1と同じ(利益を出す)。
分子は、遊んでいる現預金で借入を一部返す、運転資金として認められる分(売掛金+在庫−買掛金)を正しく計算して控除する、の2つが実務的です。詳しくは借入の適正額の記事で書いています。
打ち手3:インタレストカバレッジレシオ(利息の何倍稼いでいるか)
営業利益(+受取利息)÷ 支払利息。利息の何倍の利益を稼いでいるかで、8点。利益が同じなら、金利の高い借入を借り換えて支払利息を減らすと改善します。複数の銀行と取引していれば、金利の比較ができます(複数行取引の記事)。
打ち手4:実質自己資本で見てもらう
安全性の配点は小さいと書きましたが、債務超過かどうかは別です。債務超過だと、点数の前に区分が下がります。ここで効くのが「実質自己資本」の説明です。
社長からの借入(役員借入金)は、銀行の実務では自己資本に近いものとして見直してもらえることがあります。決算書の自己資本が薄くても、役員借入金を加えた実質ベースでプラスなら、その説明資料を添えます。
打ち手5:決算書の「分類」を正す(事実は変えない)
同じ事実でも、決算書のどこに載せるかで指標は変わります。長期の借入なのに短期に分類されている、営業外に置くべき費用が販管費に入っている、といったズレを正すだけで点が動くことがあります。ただし、事実そのものを変えるのは粉飾です。この一線は粉飾と作り込みを分ける記事で書きました。
まとめ:効く順番
- 01営業利益(償却前)を出す15点。固定費→粗利率→客数の順。
- 02債務償還年数を10年以内に15点。利益を増やすか、余剰資金で借入を減らすか。
- 03支払利息を減らす8点。借り換え・複数行の比較。
- 04実質自己資本と分類の説明資料を添える債務者区分の防衛。
配点は、中小企業経営改善計画策定支援研修(中小企業大学校)で配布された一般的な格付けモデル(12指標・返済能力38点・安全性21点・成長性25点・収益性15点、正常先の下限の目安40点)に基づきます。実際の採点表は金融機関ごとに異なり、定性評価(経営者・業界・取引状況)も加わります。
決算書3期分をお持ちください。このモデルで採点し、どの指標を直せば何点動くか、銀行にどう説明するかを、その場でお伝えします。
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