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あと1人雇えるか。「1人あたり粗利」で決める

2026年9月11日荒井 成也(財務コンサルタント)

「現場が忙しいから、あと1人採りたい」。この相談を受けたとき、当社が最初に見るのは求人票ではなく決算書の粗利です。採用は、月43万円の固定費を新しく背負う決断だからです。

この記事では、採用の可否を「社員1人あたり粗利」で判断する方法を書きます。当社の基準では、経営者が毎月見る数字の1つがこの指標です(経営者が毎月見るべき3つの数字)。

社員1人あたり粗利を出す

社員1人あたり粗利 = 年間の粗利(売上総利益)÷ 社員数(パートは労働時間で換算)

粗利6,000万円・社員10人なら、1人あたり600万円。この数字が、1人の総額人件費(給与の約1.15倍+採用・教育費、月給28万円で年約520万円)をどれだけ上回っているかが、会社の体力です。当社では、1人あたり粗利1,000万円を中小企業の目標線に置いています。

1人あたり粗利が総額人件費に近い会社は、採用の前に粗利率か単価の改善が先です。人を増やしても、増えた粗利が人件費に消えます。

確認1:その1人で、粗利はいくら増えるか

採用で増える粗利は、職種で大きく違います。

営業・製造・施工など、直接粗利を生む職種:受注の見込みから「その人が担当する売上×粗利率」を出す。年520万円の人件費に対して、増える粗利が同額以上なら採用の土台がある
経理・総務・管理など、直接は粗利を生まない職種:増える粗利はゼロ。既存の粗利から520万円を配分することになる。代わりに「社長や現場の時間が空いて、その時間で粗利がいくら増えるか」を見積もる。見積もれないなら、外部に任せる選択肢と比べる

「忙しい」は、粗利が増えている忙しさか、粗利を生まない作業が増えている忙しさか、で分けて考えます。後者なら、採用ではなく作業の削減や外注が答えになることが多いです。

確認2:総額人件費の上限に収まるか

会社が払える人件費の上限は、粗利から目標経常利益(当社基準:粗利の10%)と人件費以外の固定費を引いた額です(人事評価制度の記事で説明しています)。今の総額人件費に520万円を足して、この上限を超えないかを確かめます。

超えるなら、来期の粗利の増加見込みで賄えるか、既存社員の昇給原資を圧迫しないかを見ます。

あと何人雇えるか = (総額人件費の上限 − 今の総額人件費)÷ 1人の総額人件費

確認3:手元資金が「固定費6か月分」を割らないか

1人雇うと固定費が月約43万円増えます。当社は手元資金の目標を固定費の6か月分に置いているので、必要な手元資金も約260万円増える計算です。採用の初月から給与は出ていき、その人が粗利を生むまでには数か月かかります。

手元資金が目標を割るなら、採用と同時に運転資金の借入を検討するか、採用時期をずらします。

採用を決めたあとに見る2つのこと

まとめ:採用は「粗利の投資」として判断する

  1. 01
    社員1人あたり粗利を出す粗利÷社員数。1人の総額人件費(年約520万円)との差を見る。
  2. 02
    その1人で粗利がいくら増えるかを見積もる直接部門は受注見込み、間接部門は空いた時間の使い道で。
  3. 03
    人件費の上限と手元資金を確かめる粗利の10%を経常利益で残せるか、手元資金が固定費6か月分を割らないか。

「社員1人あたり粗利1,000万円」「経常利益=粗利の10%」「手元資金=固定費の6か月分」は当社の財務基準です。1人の総額人件費(年約520万円)は月給28万円・賞与2か月・社会保険料の会社負担約15%・採用費50万円・教育費20万円の試算で、事業規模と地域の保険料率で変わります。

採用の前に、決算書から「1人あたり粗利」「人件費の上限」「手元資金の余裕」の3つを出します。求人を出す前の60分で、採るべきか、外に出すべきかがはっきりします。

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