「現場が忙しいから、あと1人採りたい」。この相談を受けたとき、当社が最初に見るのは求人票ではなく決算書の粗利です。採用は、月43万円の固定費を新しく背負う決断だからです。
この記事では、採用の可否を「社員1人あたり粗利」で判断する方法を書きます。当社の基準では、経営者が毎月見る数字の1つがこの指標です(経営者が毎月見るべき3つの数字)。
社員1人あたり粗利を出す
粗利6,000万円・社員10人なら、1人あたり600万円。この数字が、1人の総額人件費(給与の約1.15倍+採用・教育費、月給28万円で年約520万円)をどれだけ上回っているかが、会社の体力です。当社では、1人あたり粗利1,000万円を中小企業の目標線に置いています。
確認1:その1人で、粗利はいくら増えるか
採用で増える粗利は、職種で大きく違います。
「忙しい」は、粗利が増えている忙しさか、粗利を生まない作業が増えている忙しさか、で分けて考えます。後者なら、採用ではなく作業の削減や外注が答えになることが多いです。
確認2:総額人件費の上限に収まるか
会社が払える人件費の上限は、粗利から目標経常利益(当社基準:粗利の10%)と人件費以外の固定費を引いた額です(人事評価制度の記事で説明しています)。今の総額人件費に520万円を足して、この上限を超えないかを確かめます。
超えるなら、来期の粗利の増加見込みで賄えるか、既存社員の昇給原資を圧迫しないかを見ます。
確認3:手元資金が「固定費6か月分」を割らないか
1人雇うと固定費が月約43万円増えます。当社は手元資金の目標を固定費の6か月分に置いているので、必要な手元資金も約260万円増える計算です。採用の初月から給与は出ていき、その人が粗利を生むまでには数か月かかります。
手元資金が目標を割るなら、採用と同時に運転資金の借入を検討するか、採用時期をずらします。
採用を決めたあとに見る2つのこと
- 「合う1人」を採る──合わない人を採って3か月で辞めた場合、採用費・教育期間の人件費は残らず消えます。それより大きいのは、そのあおりで既存社員が辞めたときの粗利の穴です。掲載料を安くすることより、選考に時間をかける方が財務には効きます
- 入社後の賃金をテーブルに載せる──既存社員との序列が崩れると、全員の底上げが必要になります。賃金テーブルがない会社は、採用の前に作っておく方が結局安くつきます
まとめ:採用は「粗利の投資」として判断する
- 01社員1人あたり粗利を出す粗利÷社員数。1人の総額人件費(年約520万円)との差を見る。
- 02その1人で粗利がいくら増えるかを見積もる直接部門は受注見込み、間接部門は空いた時間の使い道で。
- 03人件費の上限と手元資金を確かめる粗利の10%を経常利益で残せるか、手元資金が固定費6か月分を割らないか。
「社員1人あたり粗利1,000万円」「経常利益=粗利の10%」「手元資金=固定費の6か月分」は当社の財務基準です。1人の総額人件費(年約520万円)は月給28万円・賞与2か月・社会保険料の会社負担約15%・採用費50万円・教育費20万円の試算で、事業規模と地域の保険料率で変わります。
採用の前に、決算書から「1人あたり粗利」「人件費の上限」「手元資金の余裕」の3つを出します。求人を出す前の60分で、採るべきか、外に出すべきかがはっきりします。
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