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財務 × 経営

客数より客単価。値上げ5%で利益はどう変わるか

2026年10月7日荒井 成也(財務コンサルタント)

「売上を伸ばしたい」と考えたとき、多くの会社は客数を増やす方から考えます。新規開拓、広告、営業の増員。ところが利益で比べると、同じ売上の伸びでも単価を上げる方がはるかに大きく効きます。

理由は単純で、客数を増やすと仕入や材料も一緒に増えますが、単価を上げても仕入は増えないからです。この記事では、その差を数字で確かめ、値上げで客がどこまで減っても大丈夫かを出す式と、単価を上げる具体的な打ち手を書きます。

同じ「売上5%増」でも、利益の増え方がまるで違う

売上1億円、仕入・材料・外注などの変動費が7,000万円(粗利率30%)、人件費や家賃などの固定費が2,700万円、営業利益300万円の会社で考えます。

今客数を5%増やす単価を5%上げる
売上1億円1億500万円1億500万円
変動費7,000万円7,350万円7,000万円
粗利3,000万円3,150万円3,500万円
固定費2,700万円2,700万円2,700万円
営業利益300万円450万円(1.5倍)800万円(約2.7倍)

単価を上げた分は、変動費が増えないのでそのまま粗利になります。客数を増やした場合は、増えた売上の7割が仕入に消えます。しかもこの表は、客数が増えても固定費が変わらない前提です。実際には、客が増えれば人手や配送、事務の手間も増え、450万円も残らないことが多いはずです。

値上げで、客はどこまで減っても大丈夫か

値上げをためらう理由のほとんどは「客が離れるのが怖い」です。そこで、粗利が値上げ前と同じになる客数の減り幅を出しておきます。

客数が減ってもよい割合 = 値上げ率 ÷(粗利率 + 値上げ率)

粗利率30%の会社が5%値上げすると、5÷(30+5)=約14.3%。客数が14%減っても、粗利は値上げ前の3,000万円のままです。減り方がそれより小さければ、利益は増えます。しかも客数が減った分、現場の手間は軽くなります。

粗利率が低い会社ほど、この割合は大きくなります。粗利率20%の会社なら、5%値上げで客が20%減っても粗利は変わりません。薄利の会社ほど、値上げの効き目が大きいということです。

逆に、5%値引きすると客数を何%増やせばよいか

同じ式を値引きに当てると、怖さがよく分かります。

値引き後に必要な客数の増加 = 値引き率 ÷(粗利率 − 値引き率)
5%値上げ:客が14.3%減っても粗利は同じ
5%値引き:5÷(30−5)=客数を20%増やして、やっと粗利が元に戻る

「少し値引きすれば受注が取れる」は、粗利で見ると割に合わないことがほとんどです。客数を2割増やせば、その分の人手と手間もかかります。

単価を上げる5つの打ち手

値上げといっても、定価を一律に上げるだけではありません。値引きをやめる、取引条件を変える、売り方を変える、も単価を上げる手段です。

1値引きの決裁を上げる

現場の判断で値引きできる状態だと、単価は少しずつ下がっていきます。値引きは社長の決裁にし、毎月の値引き額の合計を出すだけで、単価の目減りが止まります。

2小口・急ぎ・遠方の料金を分ける

最低受注額、小口の手数料、特急料金、出張費。手間がかかる注文ほど安くなっていないかを見ます。料金表に書くだけで、黙ってかぶっていた手間が粗利に変わります。

3価格を3段階にする

標準の上に手厚い版を、下に簡易版を置くと、真ん中が選ばれやすくなります。一番売りたいものを真ん中に置きます。

4保守・追加サービスをメニューにする

無料でやっていたアフターフォローや相談対応を、有料の保守や追加メニューとして出します。いきなり有料にしにくければ、新規の取引から始めます。

5取引先別・商品別の粗利を出し、赤字の取引を直す

売上の大きい取引先が、値引きと手間で一番粗利が薄い、ということはよくあります。粗利の低い順に並べ、単価を見直すか、条件を変えるか、取引の比重を下げるかを決めます。

値上げの伝え方

まとめ:利益を増やす順番は、固定費・粗利・客数

  1. 01
    自社の粗利率で「客が減ってもよい割合」を出す値上げ率÷(粗利率+値上げ率)。思っていたより大きいはずです。
  2. 02
    取引先別・商品別の粗利を並べるどこから単価を見直すかが決まります。
  3. 03
    値引きの決裁と料金表から手をつける定価を変える前に、すぐできる打ち手があります。

客数を増やすのは、その後です(赤字を黒字化する正しい順番)。単価が上がった状態で客数を増やせば、増えた客の1人ひとりが厚い粗利を連れてきます。

数値例は仮設例です。「粗利率」は売上から仕入・材料・外注などの変動費を引いた率(限界利益率)で計算しています。製造業で決算書の売上総利益に工場の固定費が入っている場合は、変動費だけを引いて計算し直してください。取適法の内容は公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」によります。

決算書と売上の明細から、取引先別・商品別の粗利を並べ、値上げで客が減ってもよい割合を自社の数字で出します。どこから単価を見直すかを、一緒に決めます。

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