「共済はやったほうがいいですよ。節税になりますから」。顧問税理士からこう勧められても、「毎月の積み立てに縛られる」「資金が固定されるのが怖い」と二の足を踏んでいる経営者は多いと思います。
小規模企業共済と経営セーフティ共済を「節税商品」として捉えている時点で、本来の価値の半分も使えていません。この2つの制度の実務上の価値は、積み立てた資金を、低利で、決算書の審査なしに引き出せる貸付制度を備えている点にあります。
今回は、この2制度を「貯金箱」ではなく「資金調達の手段」として使うための仕組みと、加入前に確認しておく3つの注意点を整理します。
2つの共済は別物。まず役割を分ける
| 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済) | |
|---|---|---|
| 目的 | 経営者個人の退職金準備 | 取引先の倒産時のリスクヘッジ |
| 運営 | 中小機構 | 中小機構 |
| 掛金上限 | 月7万円(年84万円) | 月20万円(年240万円)、積立限度800万円 |
| 税務上の扱い | 全額が個人の所得控除 | 全額が法人の損金(個人事業は必要経費) |
| 対象 | 個人事業主・小規模法人の役員 | 1年以上事業を継続している中小企業者 |
ここまでは、ほとんどの経営者が顧問税理士から聞いている話です。問題はここから先です。
両制度に「契約者貸付」がある
中小機構の公表(2026年5月時点で照合)による貸付の条件です。
小規模企業共済の一般貸付
- 借入限度額:掛金の7〜9割の範囲内で、10万円から2,000万円まで(5万円単位)
- 利率:年1.5%(固定)/担保・保証人:不要/利息は借入時に前払い
- 利用条件:掛金納付月数12か月以上
- 借入期間:100万円以下は6か月または12か月の期限一括、金額に応じて最長60か月の割賦
- 資金使途:事業資金、事業関連資金、生活資金
経営セーフティ共済の一時貸付金
- 借入限度額:納付月数40か月以上で「掛金総額×95%×95%」、最高760万円(納付期間が短いと縮む)
- 利率:年0.9%(令和6年4月1日時点。金融情勢により変動)/担保・保証人:不要/利息は借入時に一括前払い
- 利用条件:加入後12か月経過かつ納付月数12か月以上、30万円以上
- 借入期間:1年(期限一括償還)
- 資金使途:事業資金(運転資金・設備資金)に限る
銀行融資のような決算書審査や事業計画のヒアリングはありません。「掛金が貯まっている」というその一点が条件です。構造としては、自分が積み立てた資金から、自分に対して低利で貸し出す形になります。資産を担保に出すのではなく、資産を温存したまま流動性を確保する、という発想です。
発生するのは1年分の利息(年0.9%なら760万円で約6.8万円)と印紙税程度です。
ただし、借換を続けるには毎年の利息と手続きを継続できる体制が前提で、会社の体力が落ちて借換ができなくなった瞬間に一括返済を迫られます。
借換前提の運用は、必ず「いざとなったら一括返済できる現金が別途ある」状態で組んでください。
使い方:銀行融資が間に合わない場面のクッションとして
- 一時的な資金の時間差を埋める:大型案件の前払い、季節変動、入金までのタイムラグ。年1.5%の借入なら、100万円借りても月の利息負担は千円台です
- 急な事業投資の初動資金:設備を今月中に押さえたい、採用で初期費用を先に出したい。書類提出から数日で振り込まれ、決算内容で躓きません
- 取引先が倒れたとき:経営セーフティ共済には本来の目的である共済金貸付(掛金総額の10倍、最高8,000万円、無利子・無担保)があります。詳しくは取引先の倒産に備える3つの備え
借りた資金を法人の余資運用(有価証券など)に回す設計を勧める解説もありますが、経営セーフティ共済の使途は「事業資金」に限られており、解釈に幅があります。当社は、貸付は事業資金と資金繰りのクッションに限って使うことをおすすめしています。
加入前に確認する3つの注意点
- 01解約後2年間は、再加入しても掛金を損金にできない(経営セーフティ共済)2024年10月の改正で導入されました。「節税のために解約して、また加入する」というサイクルは、この改正で使えなくなっています
- 02途中解約は元本割れする経営セーフティ共済は加入40か月未満での解約で元本割れ。小規模企業共済は240か月(20年)未満の任意解約で元本割れ、12か月未満は掛け捨てになります。短期で出口を作ろうとすると、節税効果以上の元本損失を被ります
- 03貸付には使途のルールがある経営セーフティ共済は事業資金のみ。小規模企業共済は事業・事業関連・生活資金まで。「借りられるから借りる」ではなく、何に使うかを先に決めておきます
そして順番です。月7万円と月20万円、合計月27万円の積立余力が安定して確保できるか。固定費の6か月分の現預金が手元にあることが、加入の最低条件です。手元が薄い状態で共済に積むのは、順番が逆です。
掛金の税務上の扱いや解約時の課税は会社ごとに判断が変わりますので、実行前に顧問税理士にご確認ください。
出典:中小機構 共済サポートnavi「小規模企業共済 契約者貸付」「経営セーフティ共済 一時貸付金」「同額借換」(2026年5月時点で照合)。利率は金融情勢により変動する旨が中小機構サイトに明記されています。
小規模企業共済・経営セーフティ共済の加入設計、貸付制度を組み込んだ資金繰りの立て付け、銀行融資との使い分けをお手伝いします。
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