お問い合わせ
労務 × 経営

社員で雇うか、業務委託で頼むか。コストの差と、越えてはいけない線

2026年9月11日荒井 成也(財務コンサルタント)

人手が足りないとき、「社員で雇う」か「業務委託(外注・フリーランス)で頼む」かは、コストだけを見れば業務委託が安く見えます。社会保険料の会社負担も、有給休暇も、残業代もかからないからです。

ただ、この差は「働き方が本当に委託であること」が前提です。契約書に業務委託と書いても、実態が社員と同じなら雇用と判断され、遡って社会保険料や残業代を払うことになります。この記事では、コストの差、越えてはいけない線、そして2026年10月に変わる消費税の扱いの3つを整理します。

コストの差:同じ「月28万円」でも会社負担は違う

社員(月給28万円)業務委託(月額28万円)
社会保険料の会社負担約15%(年約50万円)なし(本人が国保・国民年金)
賞与・有給休暇・残業代ありなし(契約で決めた報酬のみ)
消費税給与は不課税報酬に10%が乗る。相手が課税事業者なら仕入税額控除できる
辞めてもらうとき解雇には合理的理由と手続きが必要契約期間満了・契約の定めによる(中途解除は予告が必要)
教育・設備会社が用意原則本人が用意

年額で見ると、社員は給与の約1.15倍、業務委託は報酬額そのまま(消費税は控除できれば実質負担なし)。同じ月28万円なら年50万円前後の差です。ただし業務委託の側は、相手が仕事を選ぶ自由を持ち、こちらの都合で動かせない、という前提がつきます。

越えてはいけない線:「労働者性」の判断要素

業務委託か雇用かは、契約書の題名ではなく働き方の実態で判断されます。行政や裁判所が使う判断要素は、おおむね次のとおりです(昭和60年の労働基準法研究会報告が基礎になっています)。

元社員を「業務委託に切り替えて」同じ席で同じ仕事を同じ時間にさせる、というのが典型的な偽装請負です。社会保険料の削減を目的にした切り替えは、社会保険料を減らす提案の記事で書いたとおり、遡って保険料を徴収されるリスクを会社が抱えることになります。

業務委託で頼むなら守ること:フリーランス法

2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス法)が施行されました。従業員を使っている会社が、従業員を使わない個人(フリーランス)に業務を委託するときの義務が決まっています。

「翌月末払い」の会社は多いですが、月初に納品を受けて翌月末払いだと60日を超えます。支払サイトの見直しが必要になる会社があります。

2026年10月から変わる:消費税の経過措置

業務委託先が消費税の免税事業者(年間売上1,000万円以下で登録していない個人など)の場合、インボイスがないため、支払った消費税を会社の仕入税額控除に入れられません。

ただし経過措置があり、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは50%を控除できます。

月額28万円(税込)の委託先が免税事業者なら、控除できない分は、80%期間で月約5,000円、50%期間で月約12,700円。年額にすると約6万円→約15万円に増えます。10月以降は、委託先に登録を依頼するか、報酬額の見直しを話し合うか、判断が要ります。

判断の順番

  1. 01
    その仕事は「成果物」で切り出せるか切り出せる(デザイン、記事、月次の帳簿、システムの一部)なら業務委託が成り立つ。切り出せず、毎日の指示で動く仕事なら雇用。
  2. 02
    コストの差を年額で出す社員は給与の約1.15倍+採用・教育費、委託は報酬+控除できない消費税。差が年50万円なら、その差で「指揮命令できないこと」を受け入れられるかを考える。
  3. 03
    委託にするなら契約書と支払サイトを整える条件の明示、60日以内の支払、中途解除の予告。契約書の雛形はフリーランス法に合わせて作り直す。

労働者性の判断要素は労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)に基づきます。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は令和6年11月1日施行、報酬の支払期日は給付を受領した日から起算して60日以内(公正取引委員会・中小企業庁の解説資料)。インボイス制度の経過措置は令和5年10月1日〜令和8年9月30日が80%、令和8年10月1日〜令和11年9月30日が50%(国税庁)。契約書の作成・労務判断は関連会社の荒井人事労務事務所(社会保険労務士)と連携して対応します。個別の税務判断は顧問税理士にご確認ください。

「この仕事は社員で採るべきか、外に出すべきか」。年額のコスト差と、労務の線引きを一緒に確認します。委託契約書の整備は社労士事務所と連携して対応します。

無料相談を申し込む