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財務 × 人件費

賞与で出すか、月給を上げるか。会社の負担が変わる5つの違い

2026年9月11日荒井 成也(財務コンサルタント)

「今年は利益が出たから、社員に還元したい」。そのとき、月給を上げるか、賞与で出すか。年額が同じなら本人の受け取りは変わりませんが、会社側の負担と資金繰りは大きく変わります。

この記事では、会社の目線で5つの違いを整理します。結論を先に言うと、基本給は「序列と最低賃金」で決め、業績に連動する分は賞与で払うのが、中小企業の財務には合っています。

違い1:月給は固定費、賞与は変動費にできる

月給を1万円上げると、その1万円は来年も、赤字の年も出ていきます。一度上げた基本給を下げるのは、労働条件の不利益変更になり、本人の同意や合理的な理由が必要で、実務上ほぼできません。

賞与は「業績に応じて支給する」と就業規則に書いておけば、利益が出た年に厚く、出なかった年に薄くできます。注意したいのは、毎年同じ月数を慣例で払い続けると、社員も銀行も「固定費」と見るようになることです。

賞与を変動費として使うなら、支給の基準(たとえば営業利益の何%)を先に決めて、社員にも伝えておく必要があります。

違い2:資金繰りの山ができる

月給なら毎月ならして出ていきますが、賞与は6月・12月などに一度に出ていきます。社員10人に1人30万円の賞与なら、社会保険料の会社負担(約15%)を含めて、その月に約345万円のまとまった支出です。

手元資金が薄い会社では、賞与月に資金繰りが詰まり、「賞与資金」として銀行から短期で借りるケースもあります。賞与で払う方針にするなら、資金繰り表に賞与月を書き込み、支給額の1/6ずつを毎月積み立てておくのが実務です。

違い3:残業単価が変わるか

基本給を上げると、残業の割増賃金を計算する時間単価も上がります。月給28万円・月の所定労働時間160時間なら時間単価は1,750円、1万円上げると1,812円。残業が月20時間あれば、割増分を含めて月約1,560円の上乗せです。

一方、賞与のように1か月を超える期間ごとに支払う賃金は、割増賃金の計算基礎に含まれません。残業の多い職場では、この差が積み上がります。

違い4:最低賃金の判定に入るか

最低賃金は、基本給と毎月の定額手当で判定します。賞与は判定に入りません。最低賃金の引き上げに対応するために賞与を増やしても、最低賃金を下回った状態は解消されない、ということです。最低賃金の対応は基本給で行う必要があります(最低賃金2026年度改定の記事)。

違い5:決算賞与には損金の要件がある

決算の直前に「今期は利益が出たので決算賞与を出す」場合、当期の損金にするには要件があります。支給額を全員に通知していること、事業年度終了後1か月以内に支払うこと、通知した期に費用として計上していること、の3つです。

この要件と、営業利益を守る計上の考え方は決算賞与の記事で書いています。

社会保険料は月給・賞与どちらにも同じ料率でかかります(賞与は健康保険で年度累計573万円、厚生年金で1回150万円の上限あり)。この点では、どちらで払っても会社負担は大きく変わりません。

まとめ:役割を分ける

月給(基本給)賞与
性質固定費(下げにくい)変動費にできる(基準を明示すれば)
資金繰り毎月ならして出る支給月に山ができる
残業単価上がる影響しない
最低賃金の判定入る入らない
社会保険料かかる(標準報酬月額)かかる(標準賞与額・上限あり)
向いている用途序列・最低賃金・生活の安定業績の還元・決算対策

基本給は、最低賃金と社内の序列(賃金テーブル)で決める。業績が良かった分は、基準を決めた賞与で返す。この役割分担にしておくと、悪い年に固定費が重くのしかかることを避けられます。

割増賃金の計算基礎から除外される賃金(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金など)は労働基準法第37条・同法施行規則第21条、決算賞与の損金要件は法人税法施行令第72条の3に基づきます。就業規則の賞与条項の見直しは、関連会社の荒井人事労務事務所(社会保険労務士)が担当します。

「今期の利益をどう還元するか」を、資金繰りと来期の固定費まで含めて一緒に決めます。決算賞与の要件確認、就業規則の賞与条項は社労士事務所と連携して対応します。

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